総務省の攻撃 負傷する3大キャリア?

日本では急激な携帯料金の引き下げが起こっている

総務省は2021年の世界主要6都市での携帯料金の調査を行った。結果は以下である。

国際的な順位はひとまず置いといて、日本(東京)の携帯通信料金は昨年に比べて73.6%減額するという驚異の値下げ率だ。

総務省の攻撃

総務省は以前から大手キャリアにおいて、国際的に見て国内での競争が鈍化しており改善するべきであるという姿勢を見せている。

それは価格だけでなくMNP転出手数料や事務手数料、SIMロックなども念頭においた見解だ。

2015年5月にはSIMロックの解除を義務化。

2016年4月には「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、実質的に端末代無料などの大きな割引ができなくなってしまった。

2018年から2020年にかけて赤ロムであっても、信用があればSIMロックを解除することを義務化、

2021年にはついに3大キャリアの値下げ合戦が始まる。

その後更に、SIMロック自体を廃止することが検討されている。

Appleの防御

日本のスマートフォン市場はAppleのシェアが異常に膨れている。それはApple端末に対する大きな割引のためだ。

本来iPhoneはハイエンドモデルと言われる、スマートフォンの中では最も高額な部類の端末に属する。

割引によって飛ぶように売れていたiPhoneが割引を制限されるとシェアが減少するだろう。

政権の端末料金割引の制限に関してスマートフォンを製造するAppleはこのような声明をだした。

Appleは、世界で最も優れた製品を作り出し、自分たちが生まれてきた世界をさらに良いものとして次世代へ残すことに邁進しています。これは比類ない品質と業界をリードする機能を持ち、お客様の生活を豊かにしつつ、長く安心して使っていただける製品を設計し製造することを意味しています。お客様によってさまざまなご要望をお持ちかと思います。そのためにも私たちは多種多様な製品と価格帯をご用意しています。健全な競争がある市場では、さまざまな選択肢があることが重要です。残念なことに、この度の総務省令案のいくつかの条文は競争の抑制につながり、日本のお客様に対しさらに高い価格で今より少ない選択肢という状況をもたらすものであると考えています。

Apple

省令案では、端末の割引額を2万円に制限する一方で、旧モデルの在庫処分を目的とした場合は端末価格割引の上限を50%まで拡大することを認めている。
 
ただし、例外が適用されるのは「24カ月以上の在庫端末」や「製造中止端末で、入荷から12カ月以上経過した端末」などが対象だ。

これに関してAppleは次のように反論する。非常に長い。

Appleでは、日本のお客様がスマートフォンを購入する際に一連の選択肢を提供しています。アップルストアやオンライン・ストアを通じて直接Appleからご購入される場合も、量販店、通信会社各社、販売代理店といった提携先のネットワークを通じてご購入いただく場合も、日本のお客様にはさまざまな選択肢があります。iPhone XRやiPhone XSなどのAppleの最新モデルのiPhoneをご購入いただくこともできますし、iPhone8やiPhone7といった前の世代のモデルをお選びいただくこともできます。これら前の世代のiPhoneは、お客様がApple製品に期待する品質、安全、体験を、より低価格で提供しています。お客様からいただく高い評価、Appleがこだわる品質とデザイン、そして正しく管理された規模の経済によって、お客様は前の世代の製品であっても素晴らしい体験を提供してくれるものと信頼してくださっているのです。Appleでは前の世代の製品でさまざまな価格帯を設けることにより、お客様に最適なiPhoneを選べる自由を提供しているのです。

 

このアプローチはAppleと他のスマートフォン・メーカーとを棲み分けています。一つの世代の製品群のなかに、さまざまな品質と多くのバリエーションを設けるメーカーもあります。一方、Appleは世代ごとにベストな製品のみをお届けしています。ほとんどの場合、私たちは他のメーカーに比べてより少ない種類のモデル(SKU)を提供しています。私たちは、通常1年に1度または2度、最新のiPhoneを発表しています。そして、高品質な前の世代の製品により様々な価格帯を提供しています。このアプローチはAppleの業績に寄与したばかりでなく、電気通信市場における消費者利益を保護し、競争を促進するという電気通信事業法の目的をより積極的に実現してきたのです。

 

残念なことに、総務省令案はその逆のことをしています。同案では日本のお客様から選択肢が奪われ、より競争の少ないより高価格な市場が作り出されてしまいます。提案された内容のままでは、総務省令案はAppleとAppleのお客様、さらには私たちのサプライヤーやデベロッパーに対しても差別的な影響を与えかねません。

 

この差別的な対応は、利益の提供に関連する例外に関する省令案第22条の2の16において、特に顕著です。例外の一つというのは在庫ルールに関するもので、最終調達日からの経過が長く、製造が中止された製品に対する割引きを許容するものです。特に、製品の最終調達日から24ヶ月が経過している場合は、電気通信事業者は半額に相当する額の割引きを行なうことができます。製品の製造が中止されており、最終調達日から24ヶ月が経過している場合には、8割に相当する額の割引きを行なうことができます。さらに製品の製造が中止されており、最終調達日から12ヶ月が経過している場合は、50%に相当する額の割引きが許容されています。これら割引きの制限に関する例外のルールは多くのモデルを発表しては製造を中止するを繰り返し、在庫を大量に抱えるメーカーには恩恵をもたらす一方で、高品質の製品のみを提供する企業には損害を与え、消費者をより低い性能の製品へと誘導しかねません。文面通りに受け取るのであれば、同例外のルールはメーカーに割引が可能なように意図的な製造と中止を行なうことを奨励しているように見えます。「最終調達から一定の時間が経過し製品の製造が中止された場合」のみ割引を認めるという総務省令では、品質の高い製品をより多くの方に手頃な価格で提供するという目標を達成できません。この度の総務省令は、長く楽しんでいただける機能と価値を持った質の高い製品を創り出しているAppleのようなメーカーに対し、不当な扱いをするものです。

 

私たちは、「製品の発表からXX月を経過した」製品すべてにおいて割引の提供を許容することが、より公正かつ公平であると考えます。このアプローチによって、Appleの日本のお客様に不自然な形で不利益をもたらすことを避けられます。結果として健全なスマートフォン市場がもたらされ、さまざまなメーカーからのみならず、1つのメーカーの中でも多くの製品と価格から選べるようになるのです。お客様にとってより良い状況となり、日本のサプライヤー、iOSアプリ開発者、そしてコンテンツの製作者といった日本にいるパートナーにとっても利益をもたらします。

Apple

Appleは「長く楽しんでいただける機能と価値を持った質の高い製品を創り出しているAppleのようなメーカーに対し、不当な扱いをするもの」ということを軸に反論している。

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